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自分の場を丁寧に見つめる方法ー解像度を上げるー

「解像度」を上げれば、可能性が広がる

場をつくるとき、さまざまな障害が目の前に現れるときがあります。明文化されたルールや目に見えない常識です。このとき、「ルールや常識だから」といって引き下がるのではなく、目の前の人や自分自身と向き合い、丁寧に見つめることで、具体的な課題として取り扱うことができるようになります。

ルールは守る必要があるか

世の中には「禁止事項」がたくさんあります。法令、施設利用のルール、雑多なローカルルールで規定されています。また「社会通念に照らして好ましくない」というような、明文化はされてないけど、禁止されている事柄もあります。

規模の大小はあれ、社会の中で「場づくり」をするわけですから、法律なんてクソくらえ! みたいなことでは、うまくいきません。場づくりをする人には、社会性を持ってほしいと思います。

しかし、ルールを守ることばかりで、本当に必要な場がつくれるでしょうか?今回はこの問題について、考えます。

やってみないとわからない

昔、子どもたちの集まりを、夜に開いたことがあります。なぜかというと、「夜に集まってあそびたい!」と、子どもたちが言い出したからです。

子どものあそびの集まりって、ふつう昼間ですよね?「子どもが夜集まるなんて…」と思いませんか?僕も、最初そう思いました。

親たちからも「え? 夜ですか…?」という鈍い反応。「夜なら行かせません」という声もちらほら。

僕も、夜より昼間に集まった方があそぶのにはいいと思いました。でもそれは、大人の経験から言えることで、子どもには分かりません。やってみることでしか判断出来ませんし、100%の確率で、間違いなく「夜より昼がいいのか?」と言われると…分かりません。

やってみなくてはわからない。それが真実です。

さて、そこで実現のための取り組んだことがあります。それは、「夜? 夜なんてダメでしょ!」の、「ダメ」な部分の解像度を上げることでした。

目の前にあることの輪郭をはっきりさせる

夜がダメなのは、なにがどうダメなのか?
ダメな感じは分かるけど、輪郭がはっきりしていません。

そこで解像度を上げてみると…。

・夜間の外出は危険
・寝る時間が遅くなって、体調に影響する
・夜家を出る、送迎するのが大変

いろいろ出ましたが、例えば「夜間の外出は危険」というのは、親の送迎が前提の今回の集まりでは、該当しません。

夜寝る時間は、確かに1~2時間遅くなりそうでした。(でも、単発の夜の集まりの日限定の話です。)上の2つは、よく考えると、気にするに当たらないと思いました。夜の外出(つまり送迎)が大変…というのは、ネックでした。親が送迎しないといけないけど、車がない家、会場まで遠い家、小さな子どもがいる家など、送迎が難しい家がいくつかありました。

そこで、こう告知しました。

「夜間なので送迎は必須です。送迎出来ないけど参加させたい人は、
連絡ください。車でまわってくれる人がいるので、調整します。」

みんな近くに住んでいるので、車で送り迎えするよという人や、近くだからいっしょに行くよという人が、協力してくれました。

その会は「星の会」と名付けられ、夕食をみんなで作って食べ、その後ちょっと夜更かししてあそぶ、という流れで、何度かやりました。あそぶなら昼間がいいし、夜集まるなら宿泊がいいと思ったけど、この「星の会」独特の楽しさもあり、いまでも鮮明に覚えています。

解像度をあげれば、自分たちにできることが増える

「子どもが夜集まるなんて…」という拒否反応。これは低解像度の、ざっくりとした反応です。

この反応に、低解像度のままで対応すると、「そうですよね。子どもが夜集まるなんてよくないのでやめます」ということになってしまいます。

でも、解像度を上げると、「うん、そうなんですけど、具体的にどのあたりが問題ですかね?」と質問して、その「具体的な問題」が解消出来るのか、それとも、やっぱり改めて考えてみたらよくないから中止するのか、決めるのです。社会通念を相対化するわけです。

「場づくり」をするということは、いまはまだない「場」を、新しくつくり出すことを意味しています。そうすると、既存の枠組み、既存のルールから、結果的にはみ出してしまうことも多いでしょう。

そんなときに、「ルールがあるから」と簡単に引き下がらないこと。法令遵守は大前提ですが、施設利用ルール、ローカルルールなどは、運営者に丁寧に相談すると、「◯◯を配慮してくれるなら、別に問題ありませんよ」となるのもよくある話。要は解像度を上げることです。

明文化されたルールだけではなく、あなたの内側にある、心理的抵抗感も、「場づくり」の障害になります。

「なんとなく、これは無理だと思う…」そんな風に感じたら、その「無理」だとされている部分の、解像度を上げて、具体的に鮮明にしてください。

なんとなくで諦めてはいけません。もっとしつこく!それで改めて考えてみて、やっぱり無理なのか、必要な配慮や対策が出来るのか、判断します。

今回はやっぱり無理…となっても、見える景色が変わりますよ。解像度を上げるということは、丁寧にみつめることです。こんなのふつう無理だよね…と思ったら、やってみてください!

(文・長田 英史)