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NPOや地域団体のブースによくある問題点
地域のお祭りから代々木公園のアースデイみたいな大きなものまで、NPOや地域団体がイベントに「ブース出展」することがあります。出展する際の準備は色々大変ですが、お客の立場で行くと「なんだかよくわからないブース」が多いと感じることがあります。自分たちのブースがそうならないようにするためのコツをまとめました。
ブースの前に来る来場者は3つのランクに分かれる
多様な団体が集まるイベントには、多様な来場者が集まります。
そのなかには、自分たちの活動につながる可能性のある人もいれば、つながる可能性が(ほぼ)ない人もいます。ブースの前に来る来場者は、下記の3つのランク(タイプ)に分かれます。
ランクA:明確な興味を示して話しかけたりブース前に滞在してくれる人
ランクB:ちょっと立ち止まる、チラシを取る、何度か見に来るなど、興味がありそうな人
ランクC:何の興味も示さずスルーする(通り過ぎる)人
全員に同じ対応をしているケースが多いのですが、ランクごとに対応の仕方は異なります。ランク別の対応方法を下にまとめてあります。
その前に、前提となる必要事項から整理しておきましょう。この前提がなくては、ランク別対応は意味を持ちません。
テクニック1:何のブースか分かるように外装を整える
先程も書いた通り、イベントには複数のブースが並んでいます。色々なテーマの団体がありますから、そこが何のブースなのか、一見して分かるようにつくる必要があります。
このときによくある勘違いがあります。
・団体名やロゴマークが大きく書いてある
・写真などのパネルがたくさん並んでいる
・ブース前まで行くとパンフレットなどが置いてある
上記のようなケースが非常に多いのですが、これらは必ずしも「来場者に対して何のブースが分かる工夫」だとは言えません。
団体名やロゴマークは、全国的に認知されているような有名な団体以外は、無意味です。「山田太郎」と大きく書いて合っても「知らない人だな」と思うだけですよね。
写真パネルは、その写真が「何の活動をしているのか一目で分かる写真」な場合だけ有効です。子どもたちのかわいい笑顔の写真、豊かな自然の写真など、写真としては美しくても来場者には意味不明です。他人のアルバムを見せられてもほとんど興味が湧かないですよね。あれと同じです。
パンフレットは、それが取りやすく置いてあるのは良いことなのですが、問題はブース前まで行かないと目に入らないし、手にも取れない点です。これでは近寄って来た人にしかアプローチ出来ず、来場者の多くに認知すらされません。
看板・腰巻き・POPスタンドなど店舗用品を活用しよう
離れたところから見て何のブースか分かることが、必要状況です。そのためには、立体的にブースをつくる必要があります。
よくある会議机(W1800程度)の上に色々並べても、机の前まで近寄ってのぞき込まないと、何のブースか分かりません。これでは隠れているのと同じです。
大きめの看板(団体名だけでなく、活動についての短い説明なども入れる)、のぼりなどは基本ですよね。あと、よく手つかずにされるのが机の下のスペースです。腰巻きなどをつくって活用しましょう。
便利なのは店舗用品です。パンフレットなどは平置きにせず、パンフレットスタンドに設置して縦に置きます。チラシも平置きにせず、2枚重ねて(両面が表になるように)ラミネートをかけて、POPスタンドに設置します。少額の費用で見違えるようになるはずです。
離れたところから見て何のブースか分かるようになりましたか?
テクニック2:次に取ってほしいアクションを考える
そもそも、ブース出展する目的は何でしょうか?
例えば「物販をして活動資金を稼ぐ」という場合、売上目標と人的コストのバランスを考慮しましょう。ボランティアなんだから売れるだけ売れればいい、では問題です。 仮に10万円の売上が立っても、原価が四割なら、荒利は6万円です。その6万円を、何人の人がどれくらいの労力で稼いだのか? そこに「自分たちとして納得感」が得られるならOKです。
よくあるのは、「仲間を集める」「認知を広げる」というような、「人とつながる」ことを目的とした出展でしょう。「物販をして活動資金を稼ぎながら、活動を知ってもらう」というような両立を目指すケースもありますよね。
こういう時に、入会申込書や寄付のお願いをしているとしたら、それはおそらくあまり成果につながっていないのではないでしょうか?
次に取ってほしいアクションとして、「入会」や「寄付」というのは、ちょっと距離がありすぎるからです。いきなり「入会してください!」と言うのは、いきなり「結婚してください!」と言うのと同じです。いきなりだと、ほぼ無理ですよね。そこはそれ相応のプロセスが必要です。
ブース出展をする場合、目指すべきは出会った人と次の段階に進むことです。いきなりゴールすることを目指すと強引になってしまいます。その結果、「しつこく勧誘された」「独善的で嫌だった」というような望まない印象を与えることになってしまいます。
次の場としてどのようば場が適当なのかは、こちらの記事も参考にしてください。
テクニック3:来場者のランクに合わせた対応をする
いよいよブース出展! あなたの出展したブースに対するリアクションで、来場者は次の3つのランク(タイプ)に分けられます。
ランクA:明確な興味を示して話しかけたりブース前に滞在してくれる人
ランクB:ちょっと立ち止まる、チラシを取る、何度か見に来るなど、興味がありそうな人
ランクC:何の興味も示さずスルーする(通り過ぎる)人
ランク別に対応方法をまとめました。
ランクAの人への対応
ランクAの人への対応は、とてもやりやすいと思います。向こうから明確な興味を示してくれるわけですから、やりやすいですよね。気をつけたいのは、こちらからの一方通行の説明ではなく、コミュニケーションをきちんと取ることです。つまり、こちらからも質問をして「なんで興味を持ってくれたんですか?」「いままでにこういう活動に参加されたことがあるんですか?」など、状況に応じてやりとりをしましょう。
そして、連絡先を交換したり、受け皿となる場の案内をするなど、次のアクションにつながるようにしましょう。鉄は熱いうちに打て。善は急げ。このタイミングだからこそ、次のアクションを取ってもらいやすくなります。
ランクBの人への対応
さて、一番がんばらなくてはならないのは、ランクBの人への対応です。ランクAの人は、向こうから来てくれているわけですから、すごく楽です。ランクBの人たちは、興味はあるけど向こうからは来てくれない人たちですから、こちらからいく必要があります。
このときに、「接客モード」をONにしてください。
【よくあるNGなブース出展者】
椅子にふんぞり返っている(眠ってるの?)
関係者とばかり話している(後にすれば?)
人が近寄って来たのに腰を上げない(偉いの?)
写真を撮ったりSNSにUPしたりしている(SNS中毒?)
わざわざブース出展しているのにもかかわらず、上記のようなふるまいではあまりにも残念です。「接客モード」をONにして、こちらから声をかけましょう。シャイなタイプの人は、普段よりもチャレンジですね。
ランクCの人への対応
ランクCの人、まったく興味を示さずスルー人に対しては、どう対応すればいいのでしょうか?
それは、笑顔でスルーするが正解です。
離れたところから見て何のブースか分かるようになっているのにもかかわらず、あなたのブースを素通りする人は、興味がないのです。興味がない人に声をかけても嫌がられるだけ。日常生活での例をあげるまでもなく、わかりますよね?
だれかれ構わず、しつこく声をかけて、ゴミになるだけのチラシやパンフレットを強引に配布する──こうした態度は、出展者にとっても来場者にとっても意味がありません。
まとめ:こちらが選ぶのではなく相手に選んでもらう
大切なのは、相手(来場者)が選択出来るようにするという態度です。
そのために、離れたところから見て判断出来るようにつくり、ハードルの低い「次のステップ」を案内します。これらはすべて来場者の方が自分で判断出来るようにするための配慮です。
こうした配慮が、よい出会いを引き寄せ、またそれを無駄にしないことにつながります。ブース出展、しっかり準備して、楽しんでくださいね。
(文・長田 英史)