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視察や見学は断ってもいい

視察や見学は断ってもいい

「見学したい」と言われたらどうしていますか?

「視察でうかがいたい」
「一度見学させてください」
「一日ボランティアで参加したい」

場を開いていると、こんな風に言われることがあります。
興味を持ってもらえるのはありがたいことですが、実際に受け入れるのかどうかは、ちゃんと考えて判断すべきです。

れんげ舎の子どもの場は「見学お断り」

れんげ舎の子どもの活動の場は、視察・見学をお断りしています。もっと言うと、単発でのボランティアも出来ません。この方針は、20年以上前からずっと変わっていません。

れんげ舎の子どもの活動は、子どもたち自身が場の進行をする自治活動なのですが、ぱっと見は「ただ子どもが遊んでいるだけ」にしか見えません。そんなささやかで繊細な場では、外からやってくる大人は「異物」です。
たとえ見学者がとても感じのいい方で、ニコニコして見てくださったとしても、その存在はわれわれの場にとってはノイズでしかありません。子どもたちにとってのメリットが全然ないのです。

れんげ舎のカフェは「見学歓迎!」

とはいえ、これは場の質によって異なります。子どもの場の見学はお断りしていましたが、れんげ舎が15年間営業していたカフェでは、見学を歓迎していました。
カフェはお茶を飲んだり、食事をしたり、おしゃべりしたりする場ですから、見学の方が来ても目立ちませんし、邪魔にもなりません。見学を受け入れることで、認知も広がりますし、こちらにもメリットがあります。

事実、カフェには見学や視察の方が大勢いらっしゃいました。そうとは言わずにお客としていらして「出来れば、ちょっとお話を聞きたいのですが」という方も多くて、可能な限りノーアポでも対応していました。

あなたの場はあり? なし?

さて、あなたの場だったら、どうでしょうか?
視察や見学はあり? それともなし?

もし見学者の存在がいつもの場の質を変質させてしまうようなら、受け入れは難しいでしょう。断られて喜ぶ人はいませんから、断りにくいかもしれませんが、場の質というのは何より大切にすべきです。

もしわれわれが子どもの場に見学を受け入れる場合は、事前に子どもたちに話して相談します。それで、全体で「この日は見学の日」ということで、いつもと違う形で受け入れることになると思います。
ただ、場には連続性があり、場と場の間には流れ(例えば、週1回の場なら、2〜3ヶ月くらいの単位での流れ)がありますから、見学の日が近づいたときに、「この流れなら見学など受け入れずいつも通りにやりたかった…」と思うこともあるはずです。だから、断っているのですが。

お金を取ってもOK

視察や見学の場合は、お金を取ってもOKです。れんげ舎の場合、学生などが見学に来る場合はさすがに無料で対応しますが、それ以外は有料でそれなりの対価をお支払いいただいています。
ボランタリーな活動だと、ふだん動いているお金が極端に少ない場合があります。そのため「見学? もちろん無料です」ということになりがちです。ふだん扱っている金額で、相場感を持ってしまいますからね。

でも、視察や見学に来る人たちは、欲しいものを得て帰るわけです。だから、本来なら対価があってしかるべきです。思考停止して「無料でいいや」とならずに、ちょっと考えみるといいでしょう。

今回は視察や見学について書きましたが、他にも行政などが行うヒアリングなどもありますよね。非営利セクターの人は、喜んで受け入れてしまう人が多いようですが、こういうのもちゃんと判断すべきです。
ヒアリングの趣旨説明が不明確な依頼は断ればいいですし(依頼者はきっといい加減な人たちです)、趣旨を聞いて「協力したいな」と思えば、協力すればいいですよね。

場を守れるのは主催者だけ

場を守れるのは、主催者だけです。
その場にとって「大切なもの」があります。もし見学者を受け入れることで、それを大切にしきれないことにつながるようなら、守るべきなのです。

場を守るというと、自分を犠牲にして守るような守り方を想像する人もいるかもしれませんね。でも、それは違います。

あなたのなかに「大切にしたいもの」があり、それがその場に反映されています。だから、場を守ることを通して、じつは自分自身を守っているのです。

(文・長田 英史)