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軸がぶれない! 信頼感・安心感のある話し方のコツ

話し方の上手下手には2つの軸がある

話し方には上手/下手があります。
「分かりやすい/分かりにくい」という説明の上手下手があるのに対して、「信頼感・安心感があって聞き心地がいい/上滑りしていたり怪しげだったりして聞き心地が悪い」という雰囲気の上手下手もあります。説明に関しては事前に丁寧に準備することで上達出来ますが、信頼感・安心感というのは、どのようにして生み出されるのでしょうか?

2人の自分が話している

人前で話すとき、じつは2人の自分が話しています。もちろん実際には1人ですが、意識レベルの自分と無意識レベルの自分です。聞き手の方もそれに呼応して、2つのレベルで話を聞いています。

話し方マトリクス

・話の内容を論理的に聞くレベル(話し手が意識している部分に対応)
・その人の様子を感覚的に聞くレベル(話し手が意識していない部分に対応)

2つのレベルで聞いているため、例えば、次のようなアンビバレントな感想が出てきます。

「立派なことを言っているけど、なんだか怪しい」
「分かりにくい部分もあったけど、誠実そうだ」

このとき、相手方に強く残るのは「なんだか怪しい」とか「誠実そう」という感覚レベル=印象です。内容を分かりやすく説明するための事前準備はイメージ出来ても、感覚レベルの準備は難しい。話し手はどうすればいいのでしょうか?

コツは本当に思っていることを話すこと

相手に信頼感・安心感を持ってもらうためのコツは、とてもシンプル。
それは、あなた自身が本当に思ったことを話すということです。

まずあなた自身が、本当に思ったことを話そうと思うのか、本音は隠して上辺だけの話をしようと思うのか、そのことを選択する必要があります。どちらを選ぶも自由で、ここが最初の分かれ道です。

自分に正直に話します、というのは、自分自身への宣言であり、自分自身への約束です。こちらの道を選べば、聞き手に信頼感・安心感を持ってもらえる可能性が出てきます。

逆に、次のような話し方をすると、ブレが生じます。

・自分が信じ切れていないことを、信じているかのように話す
・本当は出来ないことを、まるで自分が出来るかのように話す
・自分を出さずに誰かの真似をして話す
・聞き手を完全に無視して話す
・世の中で正しいとされている概念を、自問・検証せずに話す

このブレが、話し手の身体(言葉や身振り)を通して表出し、伝わります(表出とは意識して表現することではなく、意識していないのに露呈してしまうことです)。

変に凝ったプレゼンを聞かされていて、作為や作為の過程が透けて見えることがありますよね。静かに気持ちが離れます。その瞬間、既に内容は二の次です。

本音をぶちまけろ! ということではない

自分が本当に思ったことを話すというのは、本音をぶちまけろ! という意味ではありません。自分の思ったことを表現せずに、我慢に我慢を重ねて自分の内側に閉じ込めておくと、内圧を解消するような過激な言い方になってしまうことがあります。シェイクした炭酸飲料が勢いよく吹き出すみたいな感じです。

しかし、それではうまく伝わりません。

生身の人間である以上そういう風にしか言えないこともありますが、「それでいいんだ」と開き直ってしまうと、それは幼稚な自己満足でしかなく、「伝える」という行為から逸脱してしまいます。

本音を隠すためではなく伝えるための配慮を

相手に伝えるための配慮を持って正直に話したのなら、それがどう伝わるのか、その後どういう展開になるのかについては、あまり気にしなくていいのです。それは、もうあなたの手を離れた領域だからです。

相手がどう思うのかは、コントロール出来ません。なぜなら、それは「相手の問題」だからです。正直に話しても話さなくても、最初からコントロール出来ないのです。

だからこそ、やるだけやったらあとは流れに任せます。こうして本当に思ったことを話すことから、すべてが始まるのです。

まとめ:背伸びもしない、謙らない、そのままの自分で話す

「そうはいっても人前で話すのは緊張するよ!」

という人もいるでしょう。緊張をとるにはどうしたら…という話もいろいろあるのですが、僕は「緊張しながら話す」ということでもいいと考えています。

なぜなら、人前で話すときに緊張するのは、当たり前のことだからです。緊張せずに話せる場合がある、というだけで、その緊張は異常ではなく、むしろノーマルです。

緊張から何を話していいのか分からなくなる場合には、事前にメモをつくっておいて、それを見ながら話します。「そんなのみっともないかな」とか「ジョークを交えた方がいいかな」とか、色々と頭をよぎるかもしれませんが、そんなことはどうでもいいのです。

「緊張して内容を忘れるといけないので、メモを見て話します」

そう断って話す人を見て、あなたは嫌な気持ちがしますか? むしろ「ちゃんと内容を聞こう」と思うのではないでしょうか。

自分以上の自分に見せようと背伸びをすると、緊張して、軸がブレます。それを指摘する人がいなくても、それは聞き手に伝わります。
下手に出て、へりくだって話すと、芝居がかってきて、軸がブレます。それを指摘する人がいなくても、それは聞き手に伝わります。

背伸びもしない。へりくだりもしない。ありのままの自分で話す。

そうすることで、内容を落ち着いて聞く環境を相手に与えられますし、信頼感や安心感を持ってもらいやすくなります。あなたが実際に語った言葉だけでなく、うまく言葉に出来なかった何かまで、相手が受け取ってくれるかもしれません。

(文・長田 英史)