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「つながろう」「つなげます」ばかりでいいのか?
近年は「つながろう!」というメッセージが溢れるようになりました。NPOや市民活動などの領域では、行政や中間支援組織が「団体どうしのつながり作り」「団体どうしの協働」ということをさかんに言っています。本当にそれでいいのでしょうか?
つながりをつくることのメリット
つながりが出来ることのメリットは色々あります。
・連携して課題に取り組める
・お互いに刺激し、学び合い、励まし合える
・単体では難しい「うねり」をつくり出せる
ちょっと考えただけでも、メリットがたくさん出てきます。
デメリットは、考えてみましたが、そんなにありません。
・めんどうな人と知り合って、しがらみが増える
・人と会うことに時間を取られる
・その時はつながっても、すぐに忘れてしまう
これらのデメリットを考慮に入れても、「つながる・つなげる」ことのメリットは大きいですよね。ただし、忘れてはならないのは、これらが「良いつながり」であった場合だけです。
つながって…それで何なの?
とはいえ、「つながり」は万能ではありません。
団体と団体をつなげることばかりに着目する中間支援組織も多いですが、それがどのように意味を持つのか、リアルに感じ取れているでしょうか?
まず、他とつながる余裕のある団体というのは、非常に限られています。
他団体や行政とコラボレーションするためには、自団体の活動が自立的に継続される体制が整っている必要があります。それに加えて、現業(いまやっている活動)を維持しつつ新しいことに取り組む意欲や余力のある団体でなくてはなりません。
つながるためには、傍から見るよりも力が必要なのです。
団体交流会は諸刃の剣だって知ってた?
団体交流会みたいな集まりは、諸刃の剣です。
そこがエネルギー溢れる充実した場になれば、そこでの出会いは「良い出会い」となり、「良いつながり」へと進化していく可能性を持ち得ます。この価値は非常に大きく、開催するならそうでなくてはなりません。
一方、気の抜けたような力のない場になってしまうと、そこでの出会いは「退屈な出会い」となり、そこからの良い展開は難しくなります。
また、気の抜けた団体交流会を繰り返し開催すると、そこに参加する団体が絞り込まれて来ます。それは、「そんな場でもとりあえず参加しておこう」という共通点を持つ団体が残ることになり、少々乱暴な表現になりますが“同じような団体ばかり”が集まることになりかねません。
何でもつなげればいい、つながればいい、それは間違いです。
横につながるのではなく縦に掘り下げる
「つながる・つなげる」ためには、その前に、まず自分の活動、自分の「場」について、深く掘り下げる必要があります。
あなたは、なんのために「場」をつくっていますか?
「環境を守るためです」
「子どもの居場所をつくるためです」
「まちづくりです」
いかがでしょう?
こんな答えでは不十分ですよね。これでは、なにも伝えたことになりません。
なぜ、環境を守るのですか?
子どもの居場所があると、なにが得られるのですか?
まちづくりって、何をどう変えたいということなのですか?
なぜ他ならぬ「あなたが」それをやっているのですか?
出てきた答えに対して「それはなぜ?」と、問いを重ねる。
もうこれ以上掘り下げられないというところまで…。
まとめ:一番必要なつながりは自分自身とのつながり
連帯すること、連携することは大切です。
つながること、つなげることのメリットはたくさんあります。
でも、まずはアイデンティティを確立すること。
自分の意見を確立することが必要です。
アイデンティティとアイデンティティが出会うから、意味があるのです。
場をつくる人が第一に大切にすべきなのは、他の団体とのつながりではありません。あなたの内側にある思いと、その場とのつながりです。思いと場のつながりが切れていては、もうそれは場づくりとは呼べません。形だけのものです。
横へ横へ拡散していく意識を静めて、自分たちの内奥にダイブする。
そこで汲み取れたものが、本当の意味で必要な連帯・連携を生み出す力へと変わります。
(文・長田 英史)