豊かな場を実現する黄金の方程式!
あなたが現場でいくらがんばってみても、場をより良くするには限界があります。あなたの日々の実践内容を、場づくりの成功方程式と照らし合わせてみてください。
「場」は二階建て構造をしている
まず大切な前提から。「場」は、二階建て構造を持っています。まず、その説明をしましょう。
「どんな場をつくりたい?」と尋ねられたら、あなたならどう答えますか?
「従業員がいきいきと働く職場づくりがしたい(既存の場をよりよいものにしたい)」
「地域に子どもから大人までが気軽に集まれる居場所をつくりたい(新しく場をつくりたい)」
こんな風に、「こういう場がつくりたい」と言うとき、二階建て構造に照らし合わせると、ほとんどの場合「二階」を指し示しています。二階とは、いわゆる当日(営業時間、開催時間)のこと。それに対して一階は、その前後の準備やふりかえりの場のことです。そして建物の比喩の通り、二階は一階によって支えられていて、一階づくりが場づくりの基本です。
「一階」を強化すれば「二階」は充実する
場づくりというと、「現場」に注目しますよね。でも、現場はいきなりつくれません。
どんな場でもいいのですが、今回はいま注目を集めている「子ども食堂」を例に挙げて説明しましょう。先程の二階建て構造に当てはめると、食堂(の開催時間)は二階にあたります。
第一に「しっかりとした準備」をすること
食堂なので提供する食事の調理などが思い浮かぶかもしれませんが、子どもたちや地域の人々を迎え入れるためには、他にも細々とした準備が必要になります。
このとき、主催者のチームがバラバラだったらどうでしょう? 決めたことがちゃんと伝わっていなかったり、決めたことに納得していない人がいたり、足並みが揃わないままだったらどうなるでしょうか?
子どもたちに安心できる居場所を提供したいと思っていても、その場を支える作り手=主催者どうしの信頼関係がなければ、安心感のある場をつくれません。
一方、しっかりと話し合い、納得して意思決定をして、作業を分担して準備を完了させたら、どうでしょうか。主催者のチームが互いに信頼し合い、しっかりと準備が出来れば、当日の場が安定します。安心や居心地の良さは、こうしてつくられます。
第二に「ふりかえりの場」を持つこと
しっかりと準備を整えても、思い通りにいかないことがあります。あるいは、ある人は「これでよかった」と思っているのに、他の人は「これではダメだ」と思っているというような、主催者チームのなかで見解が分かれることもあります。どちらも普通に起こり得ることですが、これを放置すると、次の「現場(食堂の開催日)」に悪影響が出て、場の質が低下します。
そんなときは、ふりかえりの場を持つ必要があります。ふりかえりの方法については、『場づくりの教科書』に詳しくまとめましたが、下記の2つの機会が必要です。
・一人ひとり(主催者側)が感じたことをシェアする機会
・事前のイメージと実際を比較して客観的にふりかえる機会
まとめ:これが成功方程式! 場づくりとはサイクルづくり
「当日の現場=二階」を支えているのは、「事前の準備と事後のふりかえり=一階」です。それはつまり、下記のようなサイクルをつくり出すことを意味しています。
まず「準備の場」で、しっかりとした準備をします。そうすれば、その時点での主催者の力量を反映した(その時点で出せる力をしっかり出し切った)「当日の場」をつくることが出来ます。「当日の場」でやるだけやったら、次は「ふりかえりの場」を持ちます。チームメンバーどうしで互いの考えや感じ方を知り合い、チームが成熟していきます。また現場で得た気付きをふりかえりの場で共有することで、その次の「準備の場」でそれを活用し、次の「当日の場」に活かせます。
このように、準備→当日→ふりかえりというサイクルをつくり、それを大切にまわしていきます。これはPDCAとかいう以前のもっと基本で、これがないと例えば「PDCAサイクルを回す」という考え方を学んでも、それを活かす主体がありません。
そして、これが一番大事なことなのですが、場づくりというのは、常にいま自分がいる目の前の場(いま・ここの場)にしかアプローチ出来ません。ですから、準備の場であってもふりかえりの場であっても、その場をよりよいものにするために全力を上げてください。それぞれの場を良くすることに注力する──これが場を良くする最大のコツです。
「準備やふりかえりの場」を「当日の場」よりも優先度の低い場だという考えは間違いです。このサイクルにおいて優先度の高低はありません。あなたがいまいる場が準備の会議だとしたら、その場をよりよい場にするためにアクセルべた踏みでお願いします! 準備の場の豊かさが、当日の場の豊かさを支えます。
場づくりを成功に導く方程式が、こうしたサイクルづくりであることを理解し、それを意識しながら取り組むと、場の変化を感じるはずです。その実感を大切に、楽しんで取り組んでみてください。
(文・長田英史)