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“普通”が本当のあなたを見えにくくする

周囲からの期待よりあなたの感じたことが大切

周囲からの期待や常識ばかりを気にしていませんか?
このテキストでは、れんげ舎・代表の長田英史が、40代半ばにさしかかって「俺はかわいいものが大好きなんだ!」と気付いた話から、場づくりにとって何を一番大切にすべきなのかを考えました。
自分の感覚を大切にせず、社会の普通に合わせて生きていると自分が見えにくくなります。周囲の期待よりあなたの感じたことの方がずっと大切です。

 

自分が知らない自分

あなたは、「鳩サブレー」をどこから食べますか?
鳩の形をした有名なお菓子です。

ある時に気づいたのですが、鳩サブレーを食べるとき、僕はちょっと「思い切って」食べてきたようなのです。よく頭から食べる? それともしっぽから? みたいな話がありますが、どっちからでも微かな抵抗感があるのです。

なぜって、鳩の形でかわいいでしょう?

「かわいいから食べるのがちょっとかわいそう」

という微かな心の震えに気づかないふりをして、どうやら「こんなのただのお菓子だ!」と自分を言い聞かせて、えいっ! と思い切って食べてきたようなのです。

そんなことをきっかけに、40代半ばにさしかかったある日、僕は気付きました。

「かわいいものが大好きだ!」

なぜ「かわいいもの好き」を自覚出来なかったのか?

世の中にはかわいい食べ物がたくさんあります。

リラックマの顔の形をしたチーズケーキとか、僕にはだれがどんな気持ちで食べるのか、まったく理解出来ません。だから自分では決して買いませんし、コンビニなどでたまたま見つけてしまうと、もっと見ていたいような、もう見たくないような、アンビバレントな状態に陥ります。傍目には分からないと思いますが(笑)。

「かわいいものが大好きだ!」

ということに気づいてから、改めて周囲を見回してみると、ミッフィーとかチェブラーシカとか、もうものすごくかわいいんです。ミニオンと出会ったときにも「なんだこのかわいい子たちは…」と愕然としましたし、おそらくこれからも次々とかわいいものとの出会いがあるはずです。

自分のフィーリングより“普通”を優先する生き方の弊害

そう思いました。それにしても、こんな僕がなぜ、こういう自分(=世界)に気づかなかったのでしょうか。

それはどうやら、僕が「男の子」だったことに一因がありそうです。

「女の子はピンクで、かわいいものが好き。」
「男の子はブルーで、かっこいいものが好き。」

僕は、そんな風には考えていません。

でも、僕は昭和47年生まれ。ランドセルも赤と黒だけの時代です。親や周囲の大人たちは、ごく“普通”に、そんな風に思っていたのでしょう。

僕は生き物が大好きで、小学校の6年間、ずっと飼育係でした。ハーマイオニーのようにわれさきに挙手をして、さほど人気のない飼育係の職をゲットしていました。動物や魚の世話をするのが、楽しくて楽しくて、心から大好きでした。

「動物が大好き! 生き物が大好き!」

このフィーリングを、僕はしっかりつかんでいました。でもそのすぐ近くにあったはずの、このフィーリングをつかみきれていませんでした。

「かわいいものが大好き!」

このフィーリングでは、僕の生きた時代・地域において、あんまり男の子っぽくなくて、ちょっと恥ずかしいような気がしたのです。

空気を読める子どもだった僕は、早い段階で「かわいいものが大好き」というフィーリングを、そっとひっこめて、いつの間にか自分でも手の届かないところに追いやってしまったのではないでしょうか。

子どもとはいえ、社会にフィットするようごく“普通”に生きた結果です。

“普通”をやっていると本当の自分が見えなくなる

親や周囲からの期待に応えようとしたり、社会で“普通”とされていることに従って生きていると、「わたしが本当に感じていること」が置き去りにされがちです。社会通念や常識というのは、完全に無視してしまうと場をつくれません。例えば、法に触れるような場はつくれても存続出来ませんし、つくること自体が問題です。

しかし、無批判にそれらを受け入れて、それを「基準」として使って場をつくるのは考え物です。場づくりは、いつも自分の内側から始まります。内側にある思いを場につなげていくプロセスのなかで、借りものの考えでしかない常識や社会通念はただのノイズです。相対化し、必要なら選択する。対等にやりあっていくべき対象です。

僕は、“常識”に合わせた結果、自分がかわいいものが大好きだったことに気付かず、かわいいものを目にしてもちゃんと反応出来ませんでした。そのことで困ったのかと言われると、さほど困っていません。残念だったとは思いますが、このこと自体ですごく困ったというようなことはありません。
でもきっと、同じようなことがたくさんあるのではないかと思うのです。これでは、自分自身を生きることは出来ないし、自分が本当に必要とする場をつくり出すことだって出来ません。

場づくりは自分の内側から

「場づくり」はいつでも、自分の内側からはじまります。あなたの「感じたこと」のなかに、前に進むためのヒントが必ずあります。周囲の期待に応えられなくても、ちょっと変でも、そんなの、本当はどうでもいいんです。

そんなことより、あなたが「感じたこと」こそが、ずっと大切です。自分を大切に、あなただから出来る、あなたらしい場づくりを!

(文/長田 英史)