目の前の場を冷静に見つめていますか?
場づくりでは、感動や盛り上がりには注意が必要です。アイスブレイクなど、場を盛り上げる様々な手法、技術がありますが、大切なのは主催者、参加者それぞれが自分らしく存在できるプロセスを守ることです。
盛り上がり・感動への違和感
「感動した!」「盛り上がった!」そんなイベントやワークショップがありますよね。こういう「意識の高揚感」が得られる「場」というのは、楽しく印象的ですが、一方で注意も必要です。
人は「意識の高揚感」があると、それに気を取られてしまい「場」に存在する様々なものに、目が向きにくくなるからです。
安心を得るには必要なプロセスがある
人が安心するまでには、相応のプロセスがあります。そのプロセスには、不安があったり、疑いがあったり、ときには苦しい体験もあるかもしれません。でも、それを乗り越えるからこそ、安心にたどり着ける。
だから、安心できる場は、1日では成立しません。急がずのんびり構えて、ひとつひとつ取り組んでOKです。
また、人が仲良くなるためにも、相応のプロセスがあります。感動的な場面を分かち合っても、仲良くはなれません。仲間意識を煽っても、仲良くはなれません。まるで仲良くなったかのような、錯覚があるだけです。
ガンガン盛り上げるとか、感動的な場面を演出するとか、そういうのは、「場づくり」のテクニックかもしれませんが、僕は、そういうことは、あまり必要じゃないと考えています。
アイスブレイクは誰のためにやるのか
会の冒頭にアイスブレイクのプログラムをやって、場が盛り上がった雰囲気になったとします。参加者の立場で、アイスブレイクがあってほっとする、そういう経験が、あるかもしれません。じつは、場が盛り上がると、主催者や講師も安心するんです。(僕はこちらの立場が多いので、よく分かります。)
緊張でガチガチのままでは双方大変なので、適度にリラックスできるのは、もちろんよいことですよね。でも、「安心」をかすめとってはいけないのです。じっくりとプロセスを踏んで、ゆっくり達成していきます。氷は打ち砕かなくても、やがて自然に溶け去ります。
「盛り上がり」も、おしつけではいけません。無理に盛り上げると、あとでどっと疲れます。
小さな火だねが、細い枝や枯葉に燃え移り、やがて太い薪や丸太に燃え広がる──それを待ちます。最初は「消えそうな火」でも、信じて待ちます。ここが勝負どころ、がんばりどころです!灯油をぶっかけて火を放つような「場づくり」は、存在し得た「必要なプロセス」を壊しかねません。
だから、まずは自分を信じることが大切。やれるだけの準備をしたら、あとはもう信じる。そして、その日にやれるだけのことをやります。その日の場がハッピーエンドでも、不安を残す終わり方でも、「おつかれさま!」と自分に言いましょう。「場づくり」には、晴れの日も雨の日もあります。
あなたが、あなたらしく存在して、場をつくった。そこで人とかかわった。それが場づくりの本質。成功も失敗もありません。
だから、小手先のテクニックに逃げないでください。あなたがあなたらしく存在することが、もっとも周りを安心させ、励まします。
(文・長田 英史)