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「脱・就活」「脱・婚活」のススメ

就職や結婚は本当におめでたいのか?

「就職おめでとう!」「結婚おめでとう!」

生活のなかでよくつかわれる「おめでとう!」ですが、なんとなく習慣で言っていませんか? 本当におめでたい出来事だと言えるのでしょうか?

かつて日本に存在した「幸福のモデル」

いま40代後半以上の人は、高度経済成長やバブル頃の景気のいい日本社会を知っていますよね。

勉強して良い学校に進学し、良い会社に就職し、良い相手と結婚をして、子どもを産んで家庭をつくる。終身雇用と年金に守られ、死ぬまで生活には困らない。敷かれたレールにさえ乗っていれば、安定した生活がある程度まで保証される──こんな「幸福のモデル」がありました。

もちろん、「そんなの間違っている!」と言う人もいました。

あいつは言っていたね サラリーマンにはなりたかねぇ
朝夕のラッシュアワー 酒びたりの中年達
ちっぽけな金にしがみつき ぶらさがってるだけじゃ NO NO
救われない これが俺達の明日ならば
尾崎豊『Bow!』─アルバム『回帰線』1985

自由になりたくないかい
熱くなりたくはないかい
自由になりたくないかい
思う様に生きたくはないかい
自由になりたくないかい
どうすりゃ自由になるかい
自由になりたくないかい
君は思う様に生きているかい

寂しがりやの君の名前すら 誰も知りはしない
Scramble交差点では 心を閉ざし解りあうことがない
どんなふうに生きていくべきか わかってないねBaby
君の怖がってる ぎりぎりの暮らしなら
なんとか見つかるはずさ
(尾崎豊『Scrambling Rock’n Roll』─アルバム『回帰線』1985)

何のために生きてるのか解らなくなるよ
手を差しのべて おまえを求めないさ この街
どんな生き方になるにしても
自分を捨てやしないよ
(尾崎豊『十七歳の地図』ーアルバム『十七歳の地図 SEVENTEEN’S MAP』)

尾崎豊の歌のように「自分には合わない」「自分は嫌だ」と言う人もいましたが、大多数の人は、それを受け入れ信じてがんばっていました。なぜなら、常識として広く浸透しているだけではなく、それを裏付けるだけの合理性と信憑性があったからです。

就職や結婚は、「幸福鉄道」の停車駅でした。だから、そこを無事通過すると「おめでとう!」と言われたのです。

バブル崩壊はリアリティ崩壊でもあった

しかし、バブル崩壊と共に右肩上がりの経済が崩壊すると、敷かれたレールは、あちこちで断線しました。「幸福のモデル」は経済成長による安定した社会を大前提としていましたから、変化を余儀なくされました。就職や結婚が安定や幸福に続いていた社会は、論理的には崩壊してしまったのです。

1989年の年末に日経平均は3万8915円の史上最高値を記録し日本はバブル景気に沸いていましたが、1993年の大卒者の就職は困難を極めました。就職先どころが面接にさえたどり着けない学生が溢れ、後に「失われた10年」と呼ばれる時代に突入します。
話は経済に留まりません。1995年1月には「阪神淡路大震災」が発災し、年齢を問わず大勢の命が一度に失われました。同年3月には、世界を震撼させた「地下鉄サリン事件」が起こります。いままでの安心・安全の枠組みが崩壊した事件でした。

さて、それでは、日本社会はどのように変わったのでしょうか?

新しい社会状況を華麗にスルー!?

敷かれたレールを上手に走っていく力ではなく、使いものにならなくなった古いレールを踏み越えて、自分で自分の道を、幸福をみつけていく力。そんな力が必要とされる時代へとシフトしました。新しい時代を希望を持って生きるためには、新しいリアリティ、新しい力が必要です。

しかし、日本社会は変化を拒否するかのように、まるで何事もなかったかのように元に戻りました。少なくとも、表面的には。旧来の「幸福モデル」を支える根底を失ったのに、その事実をスルーしました。まるで「まぁでも、基本的にいままで通りということで」とでも言うように。

変化は痛みを伴います。安定していれば安定していたほど、急な変化に対応しにくいかもしれません。ただ、状況が変化しているのに「古いリアリティ」にしがみついていることは、きっともっとずっと苦しいのではないでしょうか。

幸せなふり、安定しているふりをしていない?

だからこそいま、「苦しいな…」と感じている人がたくさんいます。
いままでの成功体験から抜け出せずにいるのです。若者たちでさえ、「就活」「婚活」と煽られ、バブル前の遺物、令和・平成どころか昭和の価値観を引きずっています。

「変化が怖い。将来が不安…」

しかし、自分の不安を、社会システムや他者に依存して解消することは、もうできない時代になりました。

就職しても結婚しても、将来はなにも約束されません。親の期待に応えるために結婚する人もたくさんいますが、僕は「古いなぁ…。好きに生きればいいのに」と思います。「自分の息子・娘が結婚しない」ということに対して、不安感や焦燥感を、自分の親が抱えているかもしれません。でも、その不安や焦燥に向き合うのは、親の課題です。

もちろん、就職しても結婚してもいいんですよ。

「就活」「婚活」と聞いて、エネルギーが湧いてくる人は、それを思い切りやればいいし、楽しめばいいですよね。でも、「就活」「婚活」と聞くと元気がなくなる人は、なにか「いい方法」を考えてみたら? と思うのです。使い古しの“正解”にこだわらず、自分にとっての「正解」を探せばいいのです。

あなたの生きられる場とは?

僕にとって、その「いい方法」とは、自分の問題意識を生きられる「場」をつくることでした。

心のなかに「?」を抱えていると、だんだん苦しくなります。
一方で「場」をつくることは、とても楽しいことなんです。

「場」ができると、くよくよ内面だけで悩むのではなく、その「場」を通して、社会とかかわりながら、それについて考え、深め、道を探ることができます。

コツは、深刻にならないこと。

いきなり会社を辞めたり、離婚したり、世捨て人になって世界を放浪したりしなくていいんです。生活のなかに、新しい「場」を組み込むこと、それが「生活を変える」ことにつながります。例えば、金曜の夜に、毎週そのための「場」をもつ。他の日は、ふつうに働いたり、学校に通ったりしている。それでいいんです。

劇的な変化、すぐ目に見える成果を求める心は、もしかすると、ちょっと弱っているのかもしれません。そんなときは、自分の心が元気になれる「場」を、まずは自分のためにつくってみてください。

深刻にならず、どうせ不確定な未来を考えすぎず、楽しみながらやってみてはどうでしょう?

他人の期待を生きないで、自分自身を生きる。
社会通念を生きないで、自分自身を生きる。

自分自身を信じて、自分が信じる道を歩む。それが「あり」になった世の中は、きっともっと豊かだと思うのです。

(文・長田 英史)