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想像を超える展開を生み出す場づくり

どんな場にも想像を超える展開が隠れている

場づくりは、いくら緻密に計画しても、その通りに進むわけではありません。それでも大切なのは、自分たちで考え決めた方法を守ることです。この型を守る姿勢があなたの場の自由を守ることにつながります。その上で、自分の感じていることをオープンに伝え合うことができれば、目の前の場はあなたの想像を超えた展開が生み出していきます。

自分のつくる場を想像してみると

場をつくるときには、計画したり想像したりして、それが始まる前に、その場が自分のなかでイメージされています。それで、実際に場を開いてみて、1.想像通りに出来なかった 2.想像通りに出来たという2つの結果があり得ます。でもじつは、もうひとつあるんです。それが、3.想像を越えた場が生まれたというものです。

会議をはじめる前に、A案とB案がありました。Aさんは、A案を支持しています。Bさんは、B案を支持しています。そして、会議で話し合った結果…さて、どうなるでしょう?

1.A案とB案、対立したまま決められなかった
2.BさんがA案支持にまわりA案に決まった
(またはその逆で、AさんがB案支持にまわりB案に決まった)

さて、これもじつは、もうひとつあります。わかりますか?

それは、3.会議前にはなかったC案が出現し、C案に決まった というものです。

想像通り」の先にあるもの

僕が実践し伝えている「場づくり」というのは、じつはいつも、この「想像を越えた結果」が射程に入っています。

そこにたどり着くまでの道のりが少々険しいので、なかなかこの部分をお話する機会がありませんでした。場づくりクラスなどでお伝えしているいわば「ベーシック編」のその先にある領域です。

メルマガ「場づくりのチカラ」で書いているのは、どちらかというとベーシックな内容が多いですが、今回は、少し先の領域について触れてみましょう。

1.想像通りに出来なかった
2.想像通りに出来た
3.想像を越えた場が生まれた

この3つのなかで、3だけに違った部分があります。どこが違っているかわかりますか?

それは、1と2が「私・私たち」が主語であるのに対して、3は「場や場に起こる現象」が主語になっていることです。1と2は、人の領域。3は、人の想像を越えた場の領域です。

会議のA案・B案の例も同じ構造を持っています。2つの案があって、どちらにも決められないということは、つまり、どちらの案も良い案ではないということです。だから、本当はどちらも廃案にした方がいいのです。

とはいえ、事業や活動を前進・継続させていくためには、限られた時間のなかで、どちらかを選ぶしかないことも。(これがずっと続くと、場も場にかかわる人々も疲弊します。)気づいていないだけで、場にはC案が隠れているのです。

それでは、どうすればそれを見つけることが出来るのでしょうか。

想像を超える場が成り立つとき

いろいろなアプローチがあるのですが、基本はまず、一人ひとりが自分の本当に思っていることを自覚すること。そして、それをオープンに伝え合うことです。

いつも想像した通りにしかならないというのは、じつは、過去を生きているからなのです。いまここにある、目の前の場を生きていない。そうなると、「いつもの勝ちパターン」を模倣することになり、同じような場が展開されます。

こういう場が悪い、ということではないんですよ!「いつもの勝ちパターン」が持てるというのは、大きな達成です。今回は、さらにその先の話をしています。

本当に思っていることというのは、日頃思っていて口にしていないことだけでなく、その場で浮かんできたことでもあります。それを、オープンに伝え合う先に、想像を越えた展開があります。

本当に思っていたこと、そしてその場で出てきたことを、率直にだれかが話すと、場と聞き手は影響を受けます。影響を受けた聞き手は、(それが会議なら)会議開始時の聞き手とは、もう違った状態になっています。新しくなっているわけです。そして、聞き手が次に、その場で出てきたこと、言いたいことを話す。こうした自由なやりとりが、C案を出現させます。

その場で出てきた考えが展開をつくる

自分はこういう人間、相手はこういう人間と、固定的にとらえる態度は、過去を生きる態度です。こうした態度は、想像を越えた展開を疎外します。

また、世の中の多くの会議で述べられている意見は、その場で出てきた考えではなく、用意された意見です。会議前に出来上がって、固まってしまっています。

一方、その場で出てきた考えというのは、ある異質なフィーリングを持っています。そのため、会議で口にするのがはばかられ、多くの人は黙ります。会議のよくある流れと違うので、そのまま忘れ去られます。こうなると、つかみかけたC案は、どこかへ流れていってしまいます。

「関係ないかもしれないんですけど……」

と控えめにでも切り出した方が、場は自由になります。その場から出てきたことで、関係ないことなどないからです。

自由さを守るために型を身につける

想像を越えた展開は、生き方を新しくしてくれます。オーバーな話ではなく、その人の人生を変えてしまいます。

それなら、集まって「浮かんできたことをどんどん話そう!」とただやればいいかというと、それだけでは無理なのです。

こうした自由な会議を支えるのは、ベーシックな会議のやり方の意思決定フロー(型)です(『場づくりの教科書』第4章を参照)。型を守ることを通して、じつは自由さを守っているのです。

その場で出てきた新しいアイデアやフィーリングを、場として展開し、社会と関係していくためには、ベーシックな「場づくりOS」が必要です。

まずは「計画通り」「時間通り」を目指してみてください。自分たちに計画通りに事を運ぶ力がまだないのに、「きょうはこういう流れだったんだよね」「きょうはこれでよかったということだと思うよ」などと、中途半端にスピリチュアルなことを言い出して、反省すべき点をうやむやに肯定する人たちがいます。

この主語の曖昧な感じ、よくありません。そうではなく、反省すべき点は反省し、改善案を話し合い、それを次の場につなげてください。

想像通りの場を生み出し、次にそれを越えるのです。

(文・長田 英史)