場所と場はべつもの。大切にすべきなのは?
「場所がないから活動ができない」と諦めてしまうことがあります。しかし、活動に大切なのは、「場所」ではなく「場」です。
「場所」と「場」の違いを理解出来ると、「まだまだやれることがある!」ということに気付くことが多いはず。目の前の「場」をよくすることが活動する人たちを元気づけ、活動を豊かにします。
活動の場所がない
NPOや市民活動団体のもっともよくある悩みのひとつに、「活動の場所がない」というのがあります。自前の場所を保有したり賃貸するとなれば、事務所であれ、運動場であれ、一軒家であれ、店舗物件であれ、どれもこれもコストがかかります。
その場所が持てないから、活動が出来ない…と。でも、それは本当に正しいのでしょうか?
場所と場の違い
「場所」と「場」は、まったくの別物です。
「場所」は、地図上に座標で示せる地点のこと。そこには広場があったり、施設があったりします。
それでは「場」とはなんでしょう?
ちょっとイメージしてみてください。気が置けない仲のいい友だちどうしで集まると、リラックスした雰囲気が出来ます。そのメンバーだからこそ話せる話題、本音。普段の生活では得られない、安心感や充実感があります。その「場所」が、だれかの自宅でも、カフェでも、旅先でも、快適さや趣の差こそあれ、そこに生まれる共通した雰囲気や可能性があるはずです。それが「場」です。
「場」とは、建物というより、むしろ人間関係。人と人とのつながり方によって生み出される可能性のことです。
場づくりのパターン
僕は仕事柄、様々な「場づくり」の現場を訪問します。
- 「場」先行パターン
場所はないけれど、公共施設などで活動の場を持っている - 「場所」先行パターン
場はないけれど、自前の施設や店などの場所を持っている
意外に思われるかもしれませんが、難しいのは後者です。
なにかの関係で、場所だけが先にあるパターンは、迷走しがち。場所だけをみて、「この場所いいな~!」と思えるような、そんな素敵な場所であればあるほど、場所に惑わされてしまう可能性が高まります。その「場所」で、どんな「場」を展開したいのか、よく考えてみてください。
場所がなくても場づくりは始められる
場所が持てないと嘆く前に、場づくりしてみましょう。いい場ができると、力が湧いてきます。
ただ、活動の性質によって、場所が必要な場合もあります。例えばシェルター的な活動は、いくらそこの場がよくても、やはり常設の施設=場所が必要です。医療設備が必要な場合、営業許可の取れる厨房が必要な場合などもあるでしょう。
それでも、大切にすべきなのは、目の前の「場」です。これは、どんな活動でも同じです。
高コストな「場所」の問題にはすぐに取り組めなくても、よい「場」にするための努力は、すぐに始められます。
(文・長田 英史)